2021年7月15日、エストニアの身分証明書法に重要な改正がありました。
今回の改正により、これまで確立されていた「身分証明書データベース(15条の2)」に加えて、「自動生体認証データベース(ABISデータベース(15条の4))」が構築されることになります。ABISデータベースは、身分証明書の発行時に収集される生体認証データ(顔画像、指紋等のデータ)について、身分証明書データベースから切り分けて管理するものです。 ABISデータベースの生体認証データ(および経歴データ)により、個人を特定(識別)したり身元を確認したりすることができます。「個人の特定」と「身元の確認」は、異なる処理です。 「個人の特定」は、個人のID(本人識別)データとABISデータベース内のいくつかのデータセットを比較します。「身元の確認」は、個人の身元データと、その人に関して以前にABISデータベースに入力された身元データを比較します。 身元の確認と検証は、個人が誰なのか不明である、本人の身元に疑問がある、複数の人の身元データを使用していると疑う理由がある場合などに実施されます。 「身元の確認」は、いわゆる「成りすまし」や「背乗り(身分・戸籍の乗っ取り)」を防止する観点から重要な処理ですが、日本では実施されていません。「身元の確認」において不可欠な生体認証データが管理されていないからです。(遺体の身元確認はあります) 日本で「身元の確認」と言われているものの多くは、実際には「身分証明書等(本人確認書類)の確認」であり、エストニアの身分証明書法で定める「身元の確認」ではありません。身元確認の脆弱性は、北朝鮮による日本人拉致問題など重大な人権侵害を引き起こす原因にもなります。 「身元の確認」は、デジタルIDの信頼性とも深く関係しています。「身元の確認」ができない状況では、政府機関等によって発行されたデジタルIDであっても、赤の他人に発行されている可能性が高くなるからです。残念ながら、日本におけるトラスト制度の確立に向けた検討では、本質的な「身元の確認」については、ほとんど議論されていないように思います。 2021年現在、日本のパスポートは信頼度ランキングで世界1位になっています。外国工作員や犯罪者にとって、「成りすまし」や「背乗り(身分・戸籍の乗っ取り)」がしやすい日本は、まさに天国と言えるかもしれません。
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