エストニアでは、政府機関等が公的業務を遂行する上で作成する文書は、原則として電子文書として作成します。ここで言う電子文書は、標準化されたメタデータを含むもので、必要に応じてデジタル署名が付されます。外部から紙文書を受け取る場合は、電子文書化した上で、元の紙文書を廃棄することも可能です。 法令で公文書のウェブ公開を義務化しており、公開用インターフェースとして各政府機関のウェブサイトに文書検索閲覧の機能が設置されています。機関に転送された意見・通知・メモ・助言などは対象外ですが、主な公文書は情報公開請求すること無しにウェブ閲覧が可能になっています。 エストニアでは、2010年頃から、文書管理から情報管理へ移行するために、法改正を含む様々な改革が行われました。上記の「電子文書の原則」もその一つです。情報管理は、データ管理、ドキュメント管理、コンテンツ管理の3つに分けています。 データ管理は、データベースによる情報管理を意味します。データベースが制度や分野ごとに整理・確立されているのに対して、ドキュメント管理は組織ごとに行われます。そのため、組織横断的に情報を再利用する場合は、データ管理の方が適していることになります。一般的に、情報量としてはドキュメントの方が大きく、その中から制度の実施・運営に必要な情報が抽出されてデータベースに格納されます。 公共情報へのアクセスと公的データベースの管理・監督について規定する公共情報法は、その目的を「民主的および社会的法の支配と開かれた社会の原則に基づいて、国民とすべての人が、公共利用を目的とした情報にアクセスする機会を確保し、国民が公務の遂行を監視する機会を創り出すこと」と定めています。 「国民が公務の遂行を監視する機会」を確保するために、エストニアのデジタル国家では、透明性(Transparency)、責任追及性(Accountability, Responsibility)、追跡可能性(Traceability)が重要になりますが、情報管理においては、監査可能性(Auditability)も求められます。 エストニアのドキュメント管理で、日本と大きく異なるのは、作成から更新、アーカイブや廃棄に至るまでの各ドキュメントに関する全ての活動が、活動主体である公務員等の個人識別コードに紐づけられていることです。紙文書に比べると、電子文書の改ざんはより困難であり、証跡を残さずに公的データベースへ不正アクセスすることは、ほぼ不可能となっています。 日本でも、文書管理から情報管理へ移行することで、デジタル社会に対応した透明性の高い政府を実現しやすくなるのではないでしょうか。
0 コメント
あなたのコメントは承認後に投稿されます。
返信を残す |
Categories
すべて
Archives
3月 2024
|
一般社団法人 日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia EU Association for Digital Society ( 略称 JEEADiS : ジェアディス)
|
免責事項
本ウェブサイトの情報は、一部のサービスを除き、無料で提供されています。当サイトを利用したウェブサイトの閲覧や情報収集については、情報がユーザーの需要に適合するものか否か、情報の保存や複製その他ユーザーによる任意の利用方法により必要な法的権利を有しているか否か、著作権、秘密保持、名誉毀損、品位保持および輸出に関する法規その他法令上の義務に従うことなど、ユーザーご自身の責任において行っていただきますようお願い致します。 当サイトの御利用につき、何らかのトラブルや損失・損害等につきましては一切責任を問わないものとします。 当サイトが紹介しているウェブサイトやソフトウェアの合法性、正確性、道徳性、最新性、適切性、著作権の許諾や有無など、その内容については一切の保証を致しかねます。 当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。 |