本ブログでも紹介した通り、エストニア政府がコロナウイルスに対する緊急事態を宣言しました。エストニアには、このような緊急事態の際に政府が宣言(命令)を行うための法制度が整備されています。
2020年3月12日付で公布された「エストニア共和国の行政区域における緊急事態の宣言(エストニア語)」では、次のように定めています。 根拠法:エストニア共和国憲法、緊急法 ・COVID-19疾患に関する非常事態を宣言する ・緊急法で規定された管理命令を実施する ・エストニア共和国の行政区域を緊急地域として指定する ・首相を非常事態の長に任命する ・共和国政府が別段の決定をしない限り、2020年5月1日まで有効とする ・メディア所有者および電子通信事業者は、今回の宣言を変更されていない形式で無料で迅速に公開する ・本宣言は(首相および国務長官の)署名時に発効する なお、エストニアでは、全ての法令(原文であるエストニア語版)にデジタルスタンプが付与されるので、メディア等による勝手な改ざん・改変が不可能になっています。 2020年3月13日には、「緊急対策の実施(エストニア語)」が公布されて、具体的な対策の内容が規定されました。 その他、今回の緊急対策に関する命令・解説の一覧も公開されています。 エストニアの危機管理に関する重要な法律は、緊急法(Emergency Act)(Hadaolukorra seadus:HOS)です。 緊急法は、危機管理の法的基盤を規定する法律で、緊急事態への準備と解決、重要なサービスの継続性の確保も含まれます。今回のような緊急事態の宣言、その解決および終了、緊急事態の宣言に伴う緊急対策における国防軍および防衛連盟の関与、国の監督と責任などを規定します。 また、緊急リスクの分析・評価、リスクコミュニケーション、マスコミや電子通信事業の義務(緊急事態の通知)なども規定します。いずれにしても、緊急事態の宣言は、政府による強制力(罰金)をもって、私人の権利を制限することになります。 緊急事態を引き起こす可能性があり、リスク分析が実行されるイベントとしては、次のものがあります。なお、リスク評価の要件とリスク分析の手順は、法令で規定されています。 1 大規模な災害(火災、爆発、環境汚染、自然災害など) 2 大規模な警察事件 3 サイバーインシデント 4 放射線または核事故 5 健康上の事故(多くの人が死亡、負傷、または中毒になるもの) 6 流行病 また、緊急法とは別に、緊急事態法(State of Emergency Act)(Erakorralise seisukorra seadus)という法律もあり、緊急法でカバーされていない、国内テロや国家反逆行為など、エストニアの憲法秩序に対する脅威の排除を規定しています。 こうした緊急時に対応する法律は、欧州では一般的なもので、緊急対策に関する法整備が進んでいない日本は、国際的には特殊な状況にあると言えます。日本では、新型コロナウイルスに対する「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律」(新型インフルエンザ等対策特別措置法)が、3月13日に可決・成立しましたが、今回のパンデミックを契機として、緊急時に対応するための法整備を進めても良いのではないでしょうか。 コメントの受け付けは終了しました。
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3月 2024
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