第2回「インターネット投票の勉強会」では、インターネット投票のセキュリティだけでなく、エストニアの安全保障やサイバーセキュリティの全体像についてもお話ししました。今回は、その一部をご紹介します。ここで紹介するのは、エストニアだけに特別にあるものではなく、EU加盟国やNATO加盟国において一般的なものと理解してください。 セキュリティという言葉は、いくつかの意味を持ちえますが、ここでは「安全保障」とします。2017年に改定されたNational Security Concepでは、エストニアの国家安全保障に関する基本的な考え方が、「セキュリティに影響を与えるすべての傾向と重要な分野を網羅する幅広いセキュリティ概念」に基づいているとしています。 エストニアの安全保障政策の目的は、エストニア国家の独立と国民の主権、国民と国家の存続、領土保全、憲法秩序、および国民の安全を確保することです。そして、安全保障政策を実施するにあたり、基本的な権利と自由を尊重し、憲法上の価値を守るとしています。 これは、安全保障政策を実施する上で、その時の状況により、優先順位があることを意味します。エストニアの国防法には戒厳令の規定があり、危機管理全般の対応を定める緊急法にも人的資源の動員の規定があります。とくに緊急法は、日本における安全保障や危機管理の法整備の参考になると思います。 エストニアの国家安全保障機関の全体像は、次の通りです。 国防の最高司令官は大統領ですが、エストニアの大統領は象徴的な存在なので、戦争の宣言に関する実質的な決定は、専門家が参加する評議会等の助言を踏まえて議会が行います。行政のトップである首相は、自然災害など戦争以外の非常事態の宣言を行うと共に、関係省庁と一体になり、実際の行動を実施します。上の図で言えば、首相および主要大臣が参加する「政府安全委員会」が実質的な司令塔の役割を果たすことになります。サイバーセキュリティについては、経済通信省が中心となる「サイバーセキュリティ評議会」が「政府安全委員会」の中に設置されています。 エストニアには、国家秘密の保護やスパイ活動の防止・取締り、外国の機密情報に関する収集・分析を担う機関があります。安全保障政策において、秘密保護や情報活動は重要であり、これが無いと同盟国との情報連携・共有ができなくなります。日本でも、特定秘密の保護に関する法律の成立が一時期話題になりましたが、エストニアの国家秘密と外国の機密情報に関する法律は大変よくできているので、日本が法改正する際の参考になると思います。 エストニアの機密情報の保護と諜報活動、機密情報の分類、それらの治安活動に関する監視体制は、次の通りです。 次回(2)に続く。
エストニアのeヘルスと医療データの活用に関するスライド資料を公開しました。
下記の通り、第2回「インターネット投票の勉強会」を開催します。エストニアのインターネット投票について、少人数で学び、自由に意見・情報交換するものです。
2019年10月1日 追記:勉強会の申し込み受付は終了しました。 今回のテーマは「インターネット投票のセキュリティ」ですが、せっかくの機会なので、エストニアの安全保障やサイバーセキュリティの全体像についてもお話ししたいと思います。ゲストコメンテーターとして、セコムIS研究所の松本泰様にご参加いただける予定です。 日時:2019年10月10日(木)14:00-16:00 会場:新橋駅周辺 ※後日お知らせいたします。 参加費:無料 テーマ:エストニアのインターネット投票のセキュリティ 進行・解説:ジェアディス理事 牟田学 ゲストコメンテーター:セコムIS研究所 松本泰様 松本様 プロフィール https://www.jst.go.jp/ristex/pp/introduction/08.html 第1回「インターネット投票の勉強会」の内容は、下記のページをご覧ください。 http://www.jeeadis.jp/jeeadis-blog/11745219 ご案内していた通り、第1回「インターネット投票の勉強会」を開催しました。当日の配布資料が欲しいジェアディス会員の方は、事務局までお知らせください。 以下、エストニアのインターネット投票について、簡単にご紹介します。 インターネット投票ができるのは、国政選挙、地方選挙、欧州議会選挙、国民投票の4つです。国民投票は、最後に実施されたのがインターネット投票が始まる前の2003年だったので、ネット投票の経験はありません。国政選挙を定める「議会選挙法」に「電子投票」の章があり、この規定が他の選挙法でも準用されています。 直近で行われたインターネット投票ができる選挙は、2019年の欧州議会選挙です。インターネット投票は「期日前投票」の一つという位置づけで、投票日10日前からの7日間、24時間対応で投票することができます。投票日に紙の投票があった場合は、インターネット投票は無効となり、紙の投票が優先されます。 インターネット投票の考え方は、既存の紙投票で行われている「居住地外の投票所での事前投票」や「在外投票」で採用されている「2枚封筒方式」と同じです。まず、外部封筒で「1人1票」であることを確認したうえで、匿名状態の内部封筒だけを集めてシャフルし、最後に内部封筒を開封して、中にある投票用紙を確認します。インターネット投票は、この「2枚封筒方式」をデジタル化したものです。 日本と大きく異なるのは、投票所における紙投票でも、厳格な本人確認が行われていることです。投票するためには身分証明書(国民IDカード等)の提示が必要で、投票用紙を受取る際には、投票者名簿への署名が求められます。エストニアは、「なりすまし」が非常に困難な国なのです。 エストニアでは、パイロットプロジェクトとして、2005年10月の地方議会議員選挙で初めてインターネット投票を実施しました。2007年には、世界初となる国政選挙でのインターネット投票を実施し、2019年9月現在までに11回の実績があります。 2019年5月の欧州議会選挙では、投票者の46,7%がインターネット投票を利用しました。2019年3月の国政選挙では、期日前投票の71,4%がインターネット投票で、海外143か国在住のエストニア市民がインターネット投票を利用しました。 日本では、「ネット投票が実現すれば、若者を中心に投票率が向上するのではないか」といった議論がありますが、エストニアにおいては投票率向上への貢献は確認されていません。しかし、実際にネット投票を体験すると、非常に簡単で便利なため、次回も(ネット投票で)投票してくれる率が高くなる傾向が見られます。 インターネット投票が始まる直前の2005年9月に、最高裁判所でインターネット投票の合憲性が争われました。これは、「インターネット投票だけ何度も再投票できる」ということが、憲法で定める選挙権の保障(統一性)を侵害するのではないかという主張に対してのものです。 最高裁は「電子投票システムにおいても選挙の自由・平等の権利は守られている」と判断しましたが、その後のネット投票の統計データにより、「インターネット投票が特定の政党に有利に働く」といった傾向は見られず、平等の権利や統一性の原則を侵害していないことが確認されました。 インターネット投票においても選挙権を保障するためには、技術的な措置に加えて、制度的な工夫が必要です。エストニアでは、インターネット投票を「事前投票」と位置付けた上で、再投票を可能にし、かつ紙投票の優位性を保証することで、自由投票や秘密投票を実現しています。 インターネット投票の流れ(国民IDカード利用)は、次の通りです。 1 投票者はIDカードをカードリーダに挿入する 2 選挙時に開設されるウェブサイトを開く 3 電子投票の専用アプリケーションをダウンロードして実行する 4 認証用のPINコードを入力する(投票者の特定) 5 選挙区の候補者リストが表示される 6 投票する候補者を選択をする 7 署名用のPINコードを入力して、自身の選択を確認する(投票の意思表示) 8 投票後は、検証アプリで投票内容(到達)を確認できる 国民IDカードまたはモバイルIDを使って、電子認証・署名を行います。今のところ、スマートフォンやタブレットからは投票できません。投票受付期間内であれば、何度でも再投票できます。紙による投票があった場合、インターネット投票は無効になります。投票所での投票時間30分に対して、オンラインの平均投票時間は約3分となっています。 エストニアには、オンライン処理と自動データ処理を前提とした、全国住民登録データベース(Estonian population register)があり、国家運営の基礎となる最も重要な唯一無二の公的データベースとして機能しています。日本の戸籍と住民基本台帳を統合し、デジタル処理を前提に再構築したようなイメージです。
「投票者リスト」は、この住民登録データベースからデータ提供を受けて作成されます。日本の「選挙人名簿」のように各市区町村の選挙管理委員会が管理するものではなく、国が責任を持って一つの投票者リストを作成・管理するので、各自治体の負担は最小限となります。 エストニアでは、公共情報法といった法令により、国や自治体で共通利用するような公的データは、用途に応じて、すべて国が単一のデータベースを作成・管理します。自治体は業務に応じた必要なデータを参照するために、国の機関が管理する様々なデータベースにアクセスする(実際にアクセスするのは、ほとんどの場合、人ではなくコンピュータです)ことになっています。「国がデータ管理者」であり、「自治体はデータ利用者」という位置づけです。こうした仕組みにより、自治体は、自らの地域の問題解決に集中することができるのです。 世界165か国から57,000人の申請取得があるeレジデンシーですが、取得者数が増えるにつれて、eレジデンシー向けのデジタルサービス市場も拡大しています。
現在、バーチャルオフィス、バーチャルオフィス(国際税務コンサルティング付き)、税務・法務コンサルティング、銀行と支払いの4つのカテゴリーで様々なサービスが提供されています。各カテゴリーで、サービスの比較もできるので、目的や予算に応じた検討が可能です。 eレジデンシーを取得して、実際にビジネスのスタートを考えている人は、ぜひ参考にしてください。 e-Residency Marketplace: Estonian Business Service Providers https://e-resident.gov.ee/marketplace/service-providers/ ジェアディスでは、下記の日程で、第1回インターネット投票の勉強会を開催いたします。エストニアのインターネット投票について、少人数で学び、自由に意見・情報交換するものです。
日時:2019年9月4日(水)15-17時 会場:新橋駅周辺を予定 ※後日、お知らせいたします。 参加費:無料 テーマ:エストニアのインターネット投票の概要 進行・解説:ジェアディス理事 牟田学 参加ご希望の方は、8月20日頃までにジェアディスの問い合わせページまでご連絡ください。 関連ブログ:エストニアのインターネット投票について 5年ごとに開催される「エストニアの歌と踊りの祭典」が、2019年7月4日(7日間)に行われました。最初の歌の祭典が行われたのが1869年とのことで、今年で150周年を迎えました。ユネスコの世界遺産として認定されていることもあり、国内外から毎回たくさんの人たちが集まります。 Welcome to the Estonian Song and Dance Celebration 2019! 小国エストニアは、隣接する他の大国から侵略・支配されてきた歴史があるため、自国の文化や伝統を大切にしています。「歌と踊りの祭典」も、彼らのアイデンティティーや政治の発展に大きな影響を与えてきました。今回の祭典のタイトルも「My Fatherland is My Love」となっています。 当日の様子を伝えるレポート、写真、動画は、Laulupidu 2019 をご覧ください。 エストニアで「デジタル国家ハッカソン」が2019年9月に開催されます。現在は、登録希望者を受付中です。
Digital Nation Hackathon | Garage48 今回のテーマは、「e-Residentとe-Residencyが直面している課題の解決」です。 デジタル国家として知られるエストニアですが、「行政への市民参加」については、あまり成功していませんでした。現在では、「48時間でアイデアからプロトタイプまで」というGarage48ハッカソンにより、「行政への市民(企業・大学)参加」が盛り上がりつつあります。つい最近(2019年6月)も、次世代の公共サービスのデジタル化を目指して、DigiriigiHakaton2.0が開催されました。 Upgrading the digital country to version 2.0 e-Residencyを取得して、実際にビジネスを開始している方は、常日頃から感じている問題を取り上げ、その解決策を考えてみてはいかがでしょうか。 技術の祭典「テクノロジーNEXT 2019」での講演を記事にしてもらいました。
エストニアで進む医療情報の利活用、それを支えるX-ROAD 日経 xTECH(クロステック) エストニアでは、法律で医療データの提出(全国健康情報システムの中央データベースへ格納)が医師に義務付けられている一方で、患者本人は自身の医療データの利用を停止したり、アクセスを制限したりすることができます。 本人は、患者ポータルから、誰がいつ自分の医療データにアクセスしたかを確認し、不正な閲覧や好奇心からののぞき見などがあれば通報することができます。実際、興味本位で有名人の医療データにアクセスした医師が解雇・資格はく奪された事例もあります。エストニアは、医療のデジタル化を進めたことで、透明性やトレーサビリティが向上し、不正な行為者への責任追及が容易になりました。 機微性の高い医療・健康データの利用についての「同意」という行為は、その運用が難しいだけでなく、本人にとっても負担が大きく、悪用される可能性もあるので、法律で用途や範囲を明示した上で、医療関係者がデータを共有できる仕組みを作ることが有効です。 日本でも、公共性・公益性の高い医療・健康データを安全な環境の下で共有できる仕組みを作り、本人には自身のデータをコントロールできる機能を持たせることで、利用と安心のバランスを取ることができるのではないでしょうか。 ジェアディスでは、エストニア健康・医療・福祉システム最新動向調査ツアー(2019年11月10日から5泊7日間)を企画しています。エストニアの医療情報化に関心がある方は、どうぞご参加ください。 Planetway社が、「市川市とPlanetway Japan株式会社との連携等に関する協定」を、エストニア共和国のヴァイノ・レイナルト特命全権大使及びヴィリヤル・ルビ経済通信省副大臣の立会いのもと、締結したことをアナウンスしました。
市川市との連携等に関する包括協定締結のお知らせ - Planetway 市川市|Planetway Japan株式会社との連携等に関する協定 連携事項 (1)情報通信技術の活用に関すること。 (2)その他前条の目的を達成するために必要な事項に関すること。 Planetway社は、デジタル国家エストニアのデータ連携基盤システム「X-Road」をベースとした技術であるデータ連携基盤ソリューション「PlanetCross」を提供しています。 IT Leadersの記事『「DX先進都市」を目指す市川市、エストニア電子政府のデータ連携技術「X-Road」を採用』によると、市の既存・新規システムに段階的に(まずは2、3の業務に適用)実装するようです。 東京新聞の『市川市「電子自治体」目指し協定 公共サービス ネットで結ぶ』によると、市政の情報化を進める村越市長が「(提携で)市の業務や福祉、教育などさまざまな分野で、これから大きな変革が起きる」と話し、Planetway社の平尾社長は「日本でのモデルケースとなるよう、三年後をめどに一定の成果を出したい」と回答しています。 「PlanetCross」のベースとなった「X-Road(X-tee)」は、エストニアでは官民データ連携の基盤として活用されています。市川市で成功することができれば、他の自治体や公共性の高い民間企業とのデータ連携にまで発展する可能性があります。 オープンソースとしての「X-Road」については、Nordic Institute for Interoperability Solutions · GitHubを参照してください。 エストニアの経済通信省と国家情報システム局が提供する「電子政府コードリポジトリ」により、将来的には、セキュリティ上の理由から特に要求されない限り、エストニアのデジタル国家ソリューションのすべてのソースコードが公開され、誰でも使用できるようになると。 Estonia creates a public code repository for e-governance solutions データの再利用を進めるEUでは、オランダやマルタ共和国など、電子政府で使用するソースコードを公開している事例がありますが、総合的な電子政府コードリポジトリ(電子政府ソースコードの再利用サービス)を提供するはエストニアが初めてなのではないでしょうか。これは非常に重要な試みで、一般的な電子政府が最終局面に入ってきたことを意味します。 個人的には、いわゆるGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に対抗できるのは、徹底した透明性を自らの条件と課した“government as a service”を実現する政府であると考えています。 GAFAが取得し利用する個人データは大量ですが、法令の下で強制力を持って国民の個人データを収集・管理し、その処理に責任を持って対応できるのは国家として確立した政府だけだからです。エストニアの強みは、「国家として統合された情報システムとデータベースのガバナンスを確立している」点にあります。 もちろん、これはGAFAを政府が一方的に規制するということではなく、常にけん制しながらお互いのバランスを模索することを意味します。電子政府コードリポジトリがうまく機能すれば、官民連携が進み、人々が抱くGAFAへの漠然とした不安を和らげる効果も期待できるのではないでしょうか。 e-riigi koodivaramu (エストニア電子政府コードリポジトリ) https://koodivaramu.eesti.ee/ 電子政府における統一的な協力とソフトウェア再利用のためのコードリポジトリ。格納されているコードはすべての人に公開されており、公開されている政府コード全体が将来利用可能になる予定。現在は、最初のバージョンで、ロードマップの計画段階にあるとしています。 Open Government Data Portal https://opendata.riik.ee/en/ オープンデータは重要ですが、政府全体のデータガバナンスが確立していない状態で進めると、実現するためのコストは高くなり、データ品質や信頼性の維持も困難になるので注意が必要です。 エストニアでは、2019年3月に国政選挙が実施されました。日本でも、元大関の把瑠都さん(カイド・ホーベルソン氏)が国会議員になったことが報道されたので、ご存知の方も多いと思います。 元把瑠都が国会議員に エストニア、対日交流尽力:日刊スポーツ エストニアでは、2005年の地方議会議員選挙からインターネット投票を導入し、2007年には国政選挙でも採用されました。現在は、国会選挙、地方議会選挙、欧州議会選挙、国民投票でインターネット投票が可能になっています。2019年6月現在までに10回の選挙でインターネット投票が実施され、回を重ねるごとに利用者は増えています。 2019年3月の国政選挙では、投票者の43.8%がインターネット投票を選択し、期日前投票の71.4%はインターネット投票です。さらに、国外居住者に限ると9割以上がネット投票を利用しており、国民にとってインターネット投票は欠かせない選択肢となっています。 参考データ:Statistics about Internet voting in Estonia 日本でインターネット投票が話題になる際に、そのメリットとして「若者を中心とした投票率の向上」が挙げられるようですが、エストニアでは、インターネット投票の実施による投票率改善への大きな貢献は確認されていません。
また、ネット投票の利用者数は25-44歳の年代が多いのですが、利用者の増加傾向は55歳以上の年代が大きくなっています。実際、投票所での投票には平均30分の時間がかかりますが、ネット投票は平均3分となっており、高齢者や外出に不便を感じる人たちにとって、ネット投票は嬉しい選択肢になるでしょう。 エストニアの政府CIOを経験したことのあるタービ・コトカ氏が指摘するように、「国民IDカード取得の義務化」も重要なポイントと言えそうです。 日本でも、インターネット投票の検討が進んでいます。2018年8月に総務省自治行政局が「投票環境の向上方策等に関する研究会報告」を公表し、「投票しにくい状況にある選挙人の投票環境向上」の中で「在外投票の利便性向上(インターネット投票)」に触れています。 上記の報告を踏まえて、平成31年度の総務省所管予算の概要には、「21.主権者教育の推進と投票しやすい環境の一層の整備」の中に「(1) 投票しやすい環境の一層の整備 2.5 (新規)」があります。 日本でインターネット投票を実現する際には、新しいチャレンジに恐れることなく、「透明性」を中心としたエストニア政府の考え方や経験を参考にして欲しいと思います。 ジェアディスでは、エストニアのインターネット投票についての勉強会の開催を検討しています。5-10人程度の少人数で、エストニアのインターネット投票について学びながら、日本で実現する際の課題や実施策などを検討するものです(全3回を予定)。参加費は、ジェアディス会員や関係者は無料、非会員は実費負担(1000円ぐらい)にしようと考えています。 興味のある方は、ジェアディスの問い合わせページよりご連絡ください。人数が集まり次第、日程を調整して実施したいと思います。 米国サンフランシスコと日本に、新しいeレジデンシーカードの受け渡し場所が開設されました。今回の措置により、日本におけるIDカードの受け渡しは、エストニア大使館から、VFS Globalが運営する「e-Residency Collection Center」へ変更されます。
New e-Residency Collection Centres are open in San Francisco & Tokyo 今回の変更については、小森さんが管理者をしているFacebookの公開グループ「e-residency(エストニア電子居住)を取ろう!」でも、Kota Alex Saitoさんが告知されています。 簡単に整理すると ・デジタルIDに対する継続的な需要増加を支援するために ・韓国で試行した「e-Residency Collection Center」の成功を踏まえて ・需要の高い日本とサンフランシスコで追加実施 ・2019年3月21日以降の申請は、全て新しい場所(東京 浜松町)で受け取る eレジデンシーの申請は、以下の4つで完了しますが、3の「カードの発行と受取場所への発送」までは、それほど時間がかかりません。しかし、最後の「カードの受取」で待たされることが多くボトルネックになっていました。 1 オンライン申請と手数料支払い 2 申請の許可 3 カードの発行と受取場所への発送 4 カードの受取 新しい受取場所である「エストニア E-Residency Collection センター」は、eレジデンシーの発行機関である「エストニア警察・国境警備局」が、VFS Globalと提携(契約)して開設されるものです。eレジデンシーの発行は、身分証明書法に基づく厳格な処理が義務づけられています。 委託先となるVFS Globalは、世界5大陸146カ国の政府と協力して領事サービス等の支援(例:カナダビザ申請センター、指紋など生体情報の登録を含む)を提供しているグローバル企業です。こうした民間サービスの活用は、エストニア政府が得意とするところですね。 今回の変更で嬉しいのは、日本語対応が充実したことでしょう。E-Residency Collection センターのウェブサイトにアクセスして、日本語による情報を確認しましょう。 改善して欲しいのは、営業日の追加でしょうか。これまで不要だった受取手数料を請求するのであれば、土日や祝祭日の一部でも良いので、平日以外の営業を行って欲しいと思います。 エストニア E-Residency Collection センターの概要 URL:https://www.vfsglobal.com/estonia/Japan/Japanese/index.html 所在地:東京都港区芝1-4-3 SANKI 芝金杉橋ビル 4F 交通:JR浜松町駅/都営大江戸線 大門駅 A1出口より徒歩約10分 受取時間:9:00-12:00, 13:00-15:00 営業日:月曜日 - 金曜日(祝祭日を除く) サービス手数料:30ユーロ相当を日本円で支払う 『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』小島 健志 (著), 孫 泰蔵 (監修)を、Kindle版で読みました。
著者の小島健志氏は、毎日新聞社や週刊ダイヤモンド編集部といった経歴だけでなく、データサイエンティストでもあるとのこと。堅実な取材とデータに基づきながら、読み物としても大変面白くなっています。 ジェアディスのラウル理事と前田代表理事による『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界 (NextPublishing) 』が、電子政府を中心としたテーマで構成されているのに対して、『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』は、よりビジネス、特にスタートアップ企業に注目した内容になっています。私自身も、とても勉強なりました。 『未来型国家エストニアの挑戦』が出版されてから3年以上が経過しましたが、その間にもエストニアのデジタル施策は着実に進んでおり、特に小回りの利く民間企業の活躍には目が離せません。 本書に出てくるキーワードは、スマートコントラクト、ブロックチェーン、データ個人主権、仮想住民(eレジデンシー)、グローバルフリーランサー、デジタルノマドビザ、エストコイン、エストニアン・マフィア、トークン・エコノミー、ロボット開発授業、eスクールなど、一般の人にはあまりなじみが無いかもしれませんが、未来を感じさせるワクワクできるものが多いです。 折しも、日本では「デジタル手続法案」が閣議決定を経て、第198回通常国会に提出されました。しかし、デジタル手続法案の概要を見ると、これまでと同様に「紙による手続きの一部についてデジタル化を推進する」といった内容にとどまっているように感じます。 本書で特に良かったと思うのは、自己肯定感を育てるために「世界は変えられる」という体験を与える仕組みが、エストニアの教育システムやキャリアパスの中に組み込まれていることを指摘している点です。 それは正に、これからの未来を担う子供たち、若い世代への投資であり、希望ある「つまらなくない未来」を作り出すエネルギーなのだと思います。 「何だってできるし、何にでもなれる」「自分たちの未来は明るい。社会は変えられるし、世界も変えられる」、日本の若い世代が、そんなことを当たり前に思える社会になるように、ジェアディスでは日本におけるデジタル化を推進していきます。 2018年5月以降に発行されたすべての新しいe-Residencyカードは、有効期間が5年間になっていますが、2018年5月1日より前に発行されたカードについても、有効期間を3年から5年に延長することができます。
残念ながら、私のe-Residencyカードは、この延長サービスが始まる少し前に有効期限が切れてしまいました。そのため、新しいカードの発行を申請しましたが、エストニア大使館が混雑していることもあり、カードの取得まで半年ほど待つことになりました。 有効期間の延長は義務ではありませんが、お金と時間を節約するためにも、延長を実行することをお勧めします。全てオンラインで完了する手続きの流れは、次の通りです。 1 カードリーダと最新のIDカードアプリケーション「DigiDoc4 Client」を使って、現在持っているe-Residencyカードが有効で、かつ有効期間が3年になっていることを確認する。 2 「DigiDoc4 Client」の画面に表示される「Extend」(延長)をクリックして、画面の指示に従って処理を完了させる。 注意:現在持っているe-Residencyカードで文書を暗号化している場合は、延長する前に復号化しておきます。延長後のe-Residencyカードでは、復号化できなくなります。また、延長の処理を途中で止めると、一定の期間経過後にカードが無効になるので、必ず30日以内に延長処理を完了してください。 IDカードアプリケーションの最新版は、ID-software installationからダウンロードできます。 手続きの詳細については、e-Residency公式ブログ「Don’t forget to extend your e-Residency card from 3 to 5 years」をご覧ください。 「DigiDoc4 Client」の画面(IDカードを読み取る前) |
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6月 2023
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一般社団法人 日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia EU Association for Digital Society ( 略称 JEEADiS : ジェアディス)
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