技術の祭典「テクノロジーNEXT 2019」での講演を記事にしてもらいました。
エストニアで進む医療情報の利活用、それを支えるX-ROAD 日経 xTECH(クロステック) エストニアでは、法律で医療データの提出(全国健康情報システムの中央データベースへ格納)が医師に義務付けられている一方で、患者本人は自身の医療データの利用を停止したり、アクセスを制限したりすることができます。 本人は、患者ポータルから、誰がいつ自分の医療データにアクセスしたかを確認し、不正な閲覧や好奇心からののぞき見などがあれば通報することができます。実際、興味本位で有名人の医療データにアクセスした医師が解雇・資格はく奪された事例もあります。エストニアは、医療のデジタル化を進めたことで、透明性やトレーサビリティが向上し、不正な行為者への責任追及が容易になりました。 機微性の高い医療・健康データの利用についての「同意」という行為は、その運用が難しいだけでなく、本人にとっても負担が大きく、悪用される可能性もあるので、法律で用途や範囲を明示した上で、医療関係者がデータを共有できる仕組みを作ることが有効です。 日本でも、公共性・公益性の高い医療・健康データを安全な環境の下で共有できる仕組みを作り、本人には自身のデータをコントロールできる機能を持たせることで、利用と安心のバランスを取ることができるのではないでしょうか。 ジェアディスでは、エストニア健康・医療・福祉システム最新動向調査ツアー(2019年11月10日から5泊7日間)を企画しています。エストニアの医療情報化に関心がある方は、どうぞご参加ください。 Planetway社が、「市川市とPlanetway Japan株式会社との連携等に関する協定」を、エストニア共和国のヴァイノ・レイナルト特命全権大使及びヴィリヤル・ルビ経済通信省副大臣の立会いのもと、締結したことをアナウンスしました。
市川市との連携等に関する包括協定締結のお知らせ - Planetway 市川市|Planetway Japan株式会社との連携等に関する協定 連携事項 (1)情報通信技術の活用に関すること。 (2)その他前条の目的を達成するために必要な事項に関すること。 Planetway社は、デジタル国家エストニアのデータ連携基盤システム「X-Road」をベースとした技術であるデータ連携基盤ソリューション「PlanetCross」を提供しています。 IT Leadersの記事『「DX先進都市」を目指す市川市、エストニア電子政府のデータ連携技術「X-Road」を採用』によると、市の既存・新規システムに段階的に(まずは2、3の業務に適用)実装するようです。 東京新聞の『市川市「電子自治体」目指し協定 公共サービス ネットで結ぶ』によると、市政の情報化を進める村越市長が「(提携で)市の業務や福祉、教育などさまざまな分野で、これから大きな変革が起きる」と話し、Planetway社の平尾社長は「日本でのモデルケースとなるよう、三年後をめどに一定の成果を出したい」と回答しています。 「PlanetCross」のベースとなった「X-Road(X-tee)」は、エストニアでは官民データ連携の基盤として活用されています。市川市で成功することができれば、他の自治体や公共性の高い民間企業とのデータ連携にまで発展する可能性があります。 オープンソースとしての「X-Road」については、Nordic Institute for Interoperability Solutions · GitHubを参照してください。 エストニアの経済通信省と国家情報システム局が提供する「電子政府コードリポジトリ」により、将来的には、セキュリティ上の理由から特に要求されない限り、エストニアのデジタル国家ソリューションのすべてのソースコードが公開され、誰でも使用できるようになると。 Estonia creates a public code repository for e-governance solutions データの再利用を進めるEUでは、オランダやマルタ共和国など、電子政府で使用するソースコードを公開している事例がありますが、総合的な電子政府コードリポジトリ(電子政府ソースコードの再利用サービス)を提供するはエストニアが初めてなのではないでしょうか。これは非常に重要な試みで、一般的な電子政府が最終局面に入ってきたことを意味します。 個人的には、いわゆるGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に対抗できるのは、徹底した透明性を自らの条件と課した“government as a service”を実現する政府であると考えています。 GAFAが取得し利用する個人データは大量ですが、法令の下で強制力を持って国民の個人データを収集・管理し、その処理に責任を持って対応できるのは国家として確立した政府だけだからです。エストニアの強みは、「国家として統合された情報システムとデータベースのガバナンスを確立している」点にあります。 もちろん、これはGAFAを政府が一方的に規制するということではなく、常にけん制しながらお互いのバランスを模索することを意味します。電子政府コードリポジトリがうまく機能すれば、官民連携が進み、人々が抱くGAFAへの漠然とした不安を和らげる効果も期待できるのではないでしょうか。 e-riigi koodivaramu (エストニア電子政府コードリポジトリ) https://koodivaramu.eesti.ee/ 電子政府における統一的な協力とソフトウェア再利用のためのコードリポジトリ。格納されているコードはすべての人に公開されており、公開されている政府コード全体が将来利用可能になる予定。現在は、最初のバージョンで、ロードマップの計画段階にあるとしています。 Open Government Data Portal https://opendata.riik.ee/en/ オープンデータは重要ですが、政府全体のデータガバナンスが確立していない状態で進めると、実現するためのコストは高くなり、データ品質や信頼性の維持も困難になるので注意が必要です。 エストニアでは、2019年3月に国政選挙が実施されました。日本でも、元大関の把瑠都さん(カイド・ホーベルソン氏)が国会議員になったことが報道されたので、ご存知の方も多いと思います。 元把瑠都が国会議員に エストニア、対日交流尽力:日刊スポーツ エストニアでは、2005年の地方議会議員選挙からインターネット投票を導入し、2007年には国政選挙でも採用されました。現在は、国会選挙、地方議会選挙、欧州議会選挙、国民投票でインターネット投票が可能になっています。2019年6月現在までに10回の選挙でインターネット投票が実施され、回を重ねるごとに利用者は増えています。 2019年3月の国政選挙では、投票者の43.8%がインターネット投票を選択し、期日前投票の71.4%はインターネット投票です。さらに、国外居住者に限ると9割以上がネット投票を利用しており、国民にとってインターネット投票は欠かせない選択肢となっています。 参考データ:Statistics about Internet voting in Estonia 日本でインターネット投票が話題になる際に、そのメリットとして「若者を中心とした投票率の向上」が挙げられるようですが、エストニアでは、インターネット投票の実施による投票率改善への大きな貢献は確認されていません。
また、ネット投票の利用者数は25-44歳の年代が多いのですが、利用者の増加傾向は55歳以上の年代が大きくなっています。実際、投票所での投票には平均30分の時間がかかりますが、ネット投票は平均3分となっており、高齢者や外出に不便を感じる人たちにとって、ネット投票は嬉しい選択肢になるでしょう。 エストニアの政府CIOを経験したことのあるタービ・コトカ氏が指摘するように、「国民IDカード取得の義務化」も重要なポイントと言えそうです。 日本でも、インターネット投票の検討が進んでいます。2018年8月に総務省自治行政局が「投票環境の向上方策等に関する研究会報告」を公表し、「投票しにくい状況にある選挙人の投票環境向上」の中で「在外投票の利便性向上(インターネット投票)」に触れています。 上記の報告を踏まえて、平成31年度の総務省所管予算の概要には、「21.主権者教育の推進と投票しやすい環境の一層の整備」の中に「(1) 投票しやすい環境の一層の整備 2.5 (新規)」があります。 日本でインターネット投票を実現する際には、新しいチャレンジに恐れることなく、「透明性」を中心としたエストニア政府の考え方や経験を参考にして欲しいと思います。 ジェアディスでは、エストニアのインターネット投票についての勉強会の開催を検討しています。5-10人程度の少人数で、エストニアのインターネット投票について学びながら、日本で実現する際の課題や実施策などを検討するものです(全3回を予定)。参加費は、ジェアディス会員や関係者は無料、非会員は実費負担(1000円ぐらい)にしようと考えています。 興味のある方は、ジェアディスの問い合わせページよりご連絡ください。人数が集まり次第、日程を調整して実施したいと思います。 |
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6月 2023
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一般社団法人 日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia EU Association for Digital Society ( 略称 JEEADiS : ジェアディス)
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