エストニア政府は、リモートワーカー向けの新しいデジタルノマドビザの発給を開始する予定です。デジタルノマドビザの特徴は、次の通りです。
・リモートワーカーが一時的にエストニアに最長で1年間滞在できる ・場所に関係なくオンラインで作業できる人(デジタルノマド)が対象 ・エストニア国外で雇用契約している、またはフリーランサーをしている ・申請の6か月前に、月額収入基準(3504ユーロ)を満たしている 例えば、日本で主にリモート作業で仕事をしていて、「エストニアで生活しながらリモートで仕事をしたい、たまに欧州旅行もしたい」といった人であれば、デジタルノマドビザの取得を検討しても良いでしょう。なお、日本人の場合、90日以内であればビザなしでエストニアに滞在することが可能です。 ★注意★ 2020年8月3日現在、日本からエストニアへの入国制限はありませんが、日本国内の感染者数が増えると、入国制限(到着後のウイルス検査と14日間の隔離等)の対象国になる可能性があります。目安として、日本全国の新規感染者数が毎日1500人ずつ増えるような状況が続くと、エストニアへの入国が制限される可能性が高くなります。 詳細は、エストニア外務省の「Information on countries and restriction on freedom of movement requirements for passengers」、または、駐日エストニア共和国大使館の「エストニアへ渡航を検討されている皆様へ」を確認してください。
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エストニアの電子政府を支えているのは、Xロードだけではありません。今回は、エストニアのデジタル国家の基礎となっている住民登録データベースを紹介し、それに付随する身分証明書の法制度も紹介したいと思います。住民登録データベースは、今回のような新型コロナ問題への対応でも大活躍しており、住民だけでなく自治体職員など公務員の負担軽減にも役立っています。 (1)エストニアの住民登録データベース エストニアの住民登録データベース(Estonian population register)は、公共情報法や人口登録法に基づき作成されるもので、国家運営の基礎となる最も重要な唯一無二の公的データベースです。2018-2019年にかけて、GDPR施行に合わせた国内法改正の影響を大きく受けていますが、基本的な考え方は変わっていません。 データ管理者は国(内務省)で、必要な範囲で処理者を任命しています。日本では各自治体で住民データを管理していますが、エストニアの場合は国が一括管理して、自治体は「国が管理するデータの利用者」という位置づけです。 データは原則として永久保存され、データ処理は専用ソフトウェアで行なわれます。データへのアクセスは業務範囲のデータに限定して許可され(機密情報)、データの正確性が推定されます。全てのデータ処理やアクセスに関する情報が記録され、定期的なデータ監査が義務付けられています。 人口登録法の構成は、次の通りです。「住民登録データベース管理法」と言っても良いかもしれません。 第1章 一般条項 第2章 住民登録簿の管理者と処理者 第3章 住民登録簿の維持管理 第4章 住民登録簿のデータ構成 第5章 登録簿へのデータ提出 第6章 登録簿のデータ主体の地位 第7章 個人識別コード 第8章 登録簿のデータへのアクセス 第9章 住所 第10章 居住の通知 第11章 地方自治体による居住データの入力 第12章 所有者の要請による居住データの修正 第13章 住所変更のその他の根拠 第14章 滞在先住所、連絡先の詳細、追加住所 第15章 紛争の監督と解決 第16章 条項の実施 第17章 法改正 エストニアの個人番号(個人識別コード)は、この人口登録法の中で規定されており、日本のようなマイナンバー法はエストニアにはありません。この意味では、日本の住民票コードに近いと言えるでしょう。 エストニアの個人識別コードを日本のマイナンバーと比較すると、次のようになります。 エストニアには、日本の戸籍のような仕組みはありません。基本的な個人情報は、住民登録データベースに統合されています。登録される個人データは、次の通りです。 1 氏名 2 性別 3 出生データ(生年月日、出生地) 4 個人識別コード 5 市民権・国籍に関するデータ 6 住居に関するデータ 7 追加住所 8 連絡先の詳細(メールアドレス、ポストボックス番号、電話番号) 9 滞在先の住所 10 婚姻状態に関するデータ (独身、既婚、死別、離婚) 11 親権に関するデータ (親権者、保護者、親権の回復・制限・剥奪など) 12 後見に関するデータ (後見人の氏名、後見開始終了時刻、後見人の同意なしに可能な取引など) 13 有効な法的能力の制限、投票権の剥奪に関するデータ 14 死亡に関するデータ (死亡時間・場所、埋葬地、死亡原因など) 15 母親、父親、配偶者、子供に関するデータ(個人識別コードなど) 16 教育の最高達成レベル(最終学歴) 17 民族籍、母国語、教育 (※統計目的の任意提出・登録データとして) その他 a 個人データに関連する文書のデータ (発行した身分証明書、外国人居住・就労許可証など) b 有権者登録データ(有権者リストおよび有権者カードの作成で利用) c 手続に関するデータ(統計データとして利用) d 登録簿の維持管理に役立つデータ(データ提出、データへのアクセス、アクセス制御、分類コードなど) ちなみに、日本の住民票の個人データは、次の通りです。 1 氏名 2 生年月日 3 性別 4 世帯主の氏名(世帯主との続柄) 5 戸籍の表示 6 住民となった年月日 7 住所、住所を定めた年月日 8 (他の市町村から転入した場合)住所を定めた旨の届出の年月日、従前の住所 8の2 個人番号 9 選挙人名簿への登録の有無 10 国民健康保険の被保険者資格に関する情報 10の2 後期高齢者医療の被保険者資格に関する情報 10の3 介護保険の被保険者資格に関する情報 11 児童手当の受給資格に関する情報 12 米穀の配給に関する情報 13 住民票コード 14 住民の福祉の増進に関する情報(市町村長が事務管理・執行するもの) 日本の住民データ管理で、エストニアと異なるのは、紙台帳の名残り、戸籍との併存、世帯単位、自治体単位、主キーの不存在などです。ですから、戸籍と住民基本台帳を整理統合し、個人単位のデジタル処理を前提とする仕組みとして再設計・再構築し、国が一括管理するようにすれば、エストニアの住民登録データベースに近いものになります。個人的には、次世代型の電子政府を実現するためには、日本もその方向で進めるべきと考えています。 (2)エストニアの身分証明書制度 日本のマイナンバーカードは、住民サービスの視点で語られることが多いですが、エストニアの国民IDカードを始めとした身分証明書の制度は、基本的には安全保障の視点で作られています。そのため、身分証明書の管理・発行は、国内の安全保障を所管する内務省の配下にある警察・国境警備局が行っています。 公的な機関が発行する身分証明書については、身分証明書法に基づき、住民登録データベースとは別の「身分証明書データベース(identity documents database)」で登録・管理されています。身分証明書データベースの主目的は、住民サービスの提供ではなく、「公共の秩序と国家安全の確保」です。 身分証明書法は、身分証明書の要件を定め、エストニア共和国がエストニアの市民および居住者に身分証明書を発行することを規定する法律です。身分証明書は、原則として「国の機関が発行する文書で、所有者本人の氏名、生年月日、個人識別コード、写真(顔画像)、署名(署名画像)を記載したもの」と定義されます(住所情報は含まれない)。オンライン上の本人確認手段としてのデジタルIDも規定されます。 15歳以上のエストニア市民は、身分証明書を取得する義務があります。初めて身分証明書を取得する場合は、警察・国境警備局が本人確認を行った上で、身分証明書データベース(identity documents database)に登録します。顔写真や指紋等の生体情報の登録も必要です。厳密な身元確認は、身分証明書の所有者の生体情報と身分証明書に記録された生体情報を比較して行なうことになっています。 身分証明書法の構成は、次の通りです。 第1章 一般条項 第2章 身分証明書の要件 第3章 身分証明書の発行と失効等 第4章 身分証明書の有効性と検証 第5章 IDカード 第5-1章 デジタルIDカード 第5-2章 eレジデンシー(電子居住)のデジタルIDカード 第5-3章 外交用IDカード 第6章 エストニア市民の旅行書類(旅券) 第7章 外国人の旅行書類 第8章 帰国証明書および帰国許可証 第9章 条項の実施 身分証明書の種類と記載情報は、次の通りです。 安全保障の視点には、戦争やテロだけではなく、今回のコロナ問題のようなパンデミックやエピデミック、大規模地震のような広域災害なども含まれます。実際、エストニアの企業や市民は、新型コロナ問題に関連する経済的な支援を、オンライン経由で簡易に受けることができました。 日本でも、安全保障の観点から、エストニアのような住民データベースと身分証明書制度が確立されることに期待します。
以前、テレビ番組の企画でe-Residency(電子居住権)を取得された池澤あやかさんが、エストニアで法人を設立されたそうです。
番組でご一緒した際も、すでにe-Residency(電子居住権)の仕組みを理解されていて、オンライン申請でも私たちのサポートはほとんど必要ありませんでした。今回、実際に法人設立された池澤さんの行動力には敬服するばかりです。 もう一つ嬉しいことに、会社の登記手続き等について、齋藤アレックス剛太さんのSetGoを利用されています。
池澤さんとyorimichi OÜの、今後の活動が楽しみです。
Anna Piperal: What a digital government looks like | TED Talk
エストニア人から見て、エストニアの電子政府はどのように映るのでしょうか。 この分野の専門家であるアンナ・ピペラル氏が、エストニア市民が恩恵を受ける様々な電子政府サービスを紹介し、国の「電子政府」を動かす主要な設計原則を説明しています。 世界165か国から57,000人の申請取得があるeレジデンシーですが、取得者数が増えるにつれて、eレジデンシー向けのデジタルサービス市場も拡大しています。
現在、バーチャルオフィス、バーチャルオフィス(国際税務コンサルティング付き)、税務・法務コンサルティング、銀行と支払いの4つのカテゴリーで様々なサービスが提供されています。各カテゴリーで、サービスの比較もできるので、目的や予算に応じた検討が可能です。 eレジデンシーを取得して、実際にビジネスのスタートを考えている人は、ぜひ参考にしてください。 e-Residency Marketplace: Estonian Business Service Providers https://e-resident.gov.ee/marketplace/service-providers/ 米国サンフランシスコと日本に、新しいeレジデンシーカードの受け渡し場所が開設されました。今回の措置により、日本におけるIDカードの受け渡しは、エストニア大使館から、VFS Globalが運営する「e-Residency Collection Center」へ変更されます。
New e-Residency Collection Centres are open in San Francisco & Tokyo 今回の変更については、小森さんが管理者をしているFacebookの公開グループ「e-residency(エストニア電子居住)を取ろう!」でも、Kota Alex Saitoさんが告知されています。 簡単に整理すると ・デジタルIDに対する継続的な需要増加を支援するために ・韓国で試行した「e-Residency Collection Center」の成功を踏まえて ・需要の高い日本とサンフランシスコで追加実施 ・2019年3月21日以降の申請は、全て新しい場所(東京 浜松町)で受け取る eレジデンシーの申請は、以下の4つで完了しますが、3の「カードの発行と受取場所への発送」までは、それほど時間がかかりません。しかし、最後の「カードの受取」で待たされることが多くボトルネックになっていました。 1 オンライン申請と手数料支払い 2 申請の許可 3 カードの発行と受取場所への発送 4 カードの受取 新しい受取場所である「エストニア E-Residency Collection センター」は、eレジデンシーの発行機関である「エストニア警察・国境警備局」が、VFS Globalと提携(契約)して開設されるものです。eレジデンシーの発行は、身分証明書法に基づく厳格な処理が義務づけられています。 委託先となるVFS Globalは、世界5大陸146カ国の政府と協力して領事サービス等の支援(例:カナダビザ申請センター、指紋など生体情報の登録を含む)を提供しているグローバル企業です。こうした民間サービスの活用は、エストニア政府が得意とするところですね。 今回の変更で嬉しいのは、日本語対応が充実したことでしょう。E-Residency Collection センターのウェブサイトにアクセスして、日本語による情報を確認しましょう。 改善して欲しいのは、営業日の追加でしょうか。これまで不要だった受取手数料を請求するのであれば、土日や祝祭日の一部でも良いので、平日以外の営業を行って欲しいと思います。 エストニア E-Residency Collection センターの概要 URL:https://www.vfsglobal.com/estonia/Japan/Japanese/index.html 所在地:東京都港区芝1-4-3 SANKI 芝金杉橋ビル 4F 交通:JR浜松町駅/都営大江戸線 大門駅 A1出口より徒歩約10分 受取時間:9:00-12:00, 13:00-15:00 営業日:月曜日 - 金曜日(祝祭日を除く) サービス手数料:30ユーロ相当を日本円で支払う 『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』小島 健志 (著), 孫 泰蔵 (監修)を、Kindle版で読みました。
著者の小島健志氏は、毎日新聞社や週刊ダイヤモンド編集部といった経歴だけでなく、データサイエンティストでもあるとのこと。堅実な取材とデータに基づきながら、読み物としても大変面白くなっています。 ジェアディスのラウル理事と前田代表理事による『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界 (NextPublishing) 』が、電子政府を中心としたテーマで構成されているのに対して、『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』は、よりビジネス、特にスタートアップ企業に注目した内容になっています。私自身も、とても勉強なりました。 『未来型国家エストニアの挑戦』が出版されてから3年以上が経過しましたが、その間にもエストニアのデジタル施策は着実に進んでおり、特に小回りの利く民間企業の活躍には目が離せません。 本書に出てくるキーワードは、スマートコントラクト、ブロックチェーン、データ個人主権、仮想住民(eレジデンシー)、グローバルフリーランサー、デジタルノマドビザ、エストコイン、エストニアン・マフィア、トークン・エコノミー、ロボット開発授業、eスクールなど、一般の人にはあまりなじみが無いかもしれませんが、未来を感じさせるワクワクできるものが多いです。 折しも、日本では「デジタル手続法案」が閣議決定を経て、第198回通常国会に提出されました。しかし、デジタル手続法案の概要を見ると、これまでと同様に「紙による手続きの一部についてデジタル化を推進する」といった内容にとどまっているように感じます。 本書で特に良かったと思うのは、自己肯定感を育てるために「世界は変えられる」という体験を与える仕組みが、エストニアの教育システムやキャリアパスの中に組み込まれていることを指摘している点です。 それは正に、これからの未来を担う子供たち、若い世代への投資であり、希望ある「つまらなくない未来」を作り出すエネルギーなのだと思います。 「何だってできるし、何にでもなれる」「自分たちの未来は明るい。社会は変えられるし、世界も変えられる」、日本の若い世代が、そんなことを当たり前に思える社会になるように、ジェアディスでは日本におけるデジタル化を推進していきます。 2018年5月以降に発行されたすべての新しいe-Residencyカードは、有効期間が5年間になっていますが、2018年5月1日より前に発行されたカードについても、有効期間を3年から5年に延長することができます。
残念ながら、私のe-Residencyカードは、この延長サービスが始まる少し前に有効期限が切れてしまいました。そのため、新しいカードの発行を申請しましたが、エストニア大使館が混雑していることもあり、カードの取得まで半年ほど待つことになりました。 有効期間の延長は義務ではありませんが、お金と時間を節約するためにも、延長を実行することをお勧めします。全てオンラインで完了する手続きの流れは、次の通りです。 1 カードリーダと最新のIDカードアプリケーション「DigiDoc4 Client」を使って、現在持っているe-Residencyカードが有効で、かつ有効期間が3年になっていることを確認する。 2 「DigiDoc4 Client」の画面に表示される「Extend」(延長)をクリックして、画面の指示に従って処理を完了させる。 注意:現在持っているe-Residencyカードで文書を暗号化している場合は、延長する前に復号化しておきます。延長後のe-Residencyカードでは、復号化できなくなります。また、延長の処理を途中で止めると、一定の期間経過後にカードが無効になるので、必ず30日以内に延長処理を完了してください。 IDカードアプリケーションの最新版は、ID-software installationからダウンロードできます。 手続きの詳細については、e-Residency公式ブログ「Don’t forget to extend your e-Residency card from 3 to 5 years」をご覧ください。 「DigiDoc4 Client」の画面(IDカードを読み取る前) エストニア最大のスタートアップイベント・技術会議「Latitude59 2019」(@Latitude59)が、2019年5月16日と17日に開催されます。 イベントへの参加が予想されるのは、200人の投資家、150人のスタートアップ起業家を含む2,500人以上で、日本からの参加者も少なくありません。 昨年の様子は、「エストニア最大のスタートアップイベント「Latitude 59」2日目 起業国家が放つ「スタートアップを生み出すのは子供たち」というメッセージ - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)」で紹介されています。 Latitude59 2017 の映像 Latitude59 2018 オープニング討論:Data, democracy & tech Latitude59は、起業家を支援するエストニア政府の施策「eレジデンシー(電子居住)」と連携しており、その一環としてeレジデンシー取得者をLatitude59へ招待してくれるプログラム「Win a trip to Estonia & showcase your company at Latitude59!」を実施しています。 招待プログラムへの参加は簡単で、2019年3月31日までに申し込みフォームに必要事項を記入して送信するだけ。今年の質問は、「事業を構築する上での最大の課題は何でしたか?」です。 参加要件は、 1 有効なeレジデンシーIDカードを保有している 2 エストニアに会社を登記している 3 18歳以上である などです。利用規約を確認した上で申し込んでください。 今年は3名の招待を予定しています。その特典は、 ・最寄りの空港からの航空チケット(最大800ユーロ) ・3泊の宿泊施設 ・Latitude59のチケット ・e-Residencyブースでの会社スペース この機会を利用して、あなたの会社を世界の投資家にPRしてください! Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)に、齋藤アレックス剛太氏によるコラム記事「日本にも約2000人の電子国民 エストニア「e-Residency」が目指す未来」(2019/01/23)が掲載されています。
電子国民(住民)プログラム 『e-Residency(イーレジデンシー)』のエストニアe-Residencyチームに単独インタビューし、これまでの経緯や今後の展開を紹介する内容です。 今後の展開として紹介されている「e-Residency2.0」については、齋藤氏のブログ「エストニア大統領が ”e-Residency2.0”のホワイトペーパーを発表」で、より詳しく解説されています。 e-Residencyの狙いとエストニアのデジタル戦略 「e-Residency」は、世界中の人にエストニアのデジタルIDとオンラインサービスを提供するもので、主な狙いはエストニア国内の経済・ビジネスの活性化です。人口が少なく増加もあまり期待できないエストニアにとって、「e-Residency」は海外からの投資を呼び込むきっかけになります。 2000年代の初めから構築・運用されてきた、いわゆる「電子政府」も安定・成熟期に入り、2010年頃には電子政府のインフラを活用したeヘルス(医療のデジタル化)もほぼ整備が完了してしまいました。 エストニアでは、7年ごとにデジタル戦略(IT戦略)を更新するのですが、さて次は何をしようかと考えていたアイデアの中に、この「e-Residency」もありました。 2013年に発表された新しいデジタル戦略「Digital Agenda 2020 for Estonia」には、「e-Residency」の他に、友好国のデータセンターに重要データをバックアップする「データ大使館」のプログラムもあります。 「データ大使館」もルクセンブルグで運用が始まっており、政府が掲げるデジタル戦略を、国民との約束として、首相や大統領が交代しても、ひとつひとつ着実に実践していくところに、エストニアの強みがあるように思います。 e-Residencyの今後の可能性 「e-Residency」が始まった当時は、すでにエストニアで会社を経営するフィンランド人が数多く取得したと言われています。エストニアのオンライン公共サービスを使って、会社をリモートで経営しやすくなるからです。 「e-Residency」プログラムの統計データを「見える化」して提供する「e-Residencyダッシュボード」によると、5万人を超える申請者のうち、依然としてフィンランドからの取得が多いですが、日本も2500名を超えており、国別で6位となっています。 「e-Residency」取得者による新規の会社設立も6000社を超えており、上位3か国はウクライナ、ドイツ、ロシアです。(2019年1月26日現在) 筆者ぐらいのおじさん世代から見ると、「e-Residency」は、2000年頃のドットコムバブルに少し似ています。規模や勢いは小さいですが、参加する人たちの熱気は高く、当時にはそれほど浸透してなかったフリーランスやデジタルノマドといった新しい働き方とも相性が良いようです。 ゴールドラッシュに例えられたドットコムバブルの時、確実に儲けたのは、一獲千金を狙ってやってくる人たちを相手にしたビジネスでした。それは、「e-Residency」でも同じで、「e-Resident(電子住民)」を支援するサービスが初めに立ち上がり、電子住民の人数が増えるにつれて、支援サービスの増加・改善が続いている状況です。 エストニアに約1,000万ユーロの税収をもたらしたとされる電子住民ですが、今後は、この電子住民によるコミュニティ機能が強化される中で、新しい経済圏・エコシステムとして成長していけるかがポイントになるでしょう。そのヒントは、「e-Residency2.0」にも見ることができます。 「Digital Agenda 2020 for Estonia」の改訂版となる、2021年以降のデジタル戦略も、現在策定中なので、こちらも楽しみにしたいと思います。 本日24時より放送される、BS日テレ「Innovative Tomorrow VRが変えるあの業界の未来!」(毎週月曜24:00~24:30)で、池澤あやかさんがエストニアの電子政府やe-Residencyの取組みをご紹介します。
番組後半のミニコーナーですが、今日の放送では「エストニアの電子化はどれほど進んでいるのか?」、来週6月4日の放送では「e-Residency(電子居住権)のメリットや取得方法」についてご紹介します。 最新の情報にも触れていますので、エストニアに関心がある方は、どうぞご覧ください。 e-Residency team 来日記念講演会の開催に合わせまして、日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会(JEEADiS)に寄せられた、eレジデンシーに関する質問への回答を作成しました。
http://www.jeeadis.jp/e-residency-faq.html 回答の作成にあたっては、エストニアのeレジデンシーチームおよび駐日エストニア共和国大使館のご協力を頂きました。 写真を受付けてもらえない、カード決済ができないといった方へのヒントもありますので、参考にして頂ければ幸いです。 2018年3月1日開催のブロックチェーンをテーマにした無料セミナーのご案内です。ブロックチェーン活用による地域・コミュニティ活性化の可能性など、大変興味深い内容になっています。
《ブロックチェーンフェスティバル 2018 in Sapporo》 ブロックチェーンの今と未来 AIやIoTとの関係・ICO・社会課題解決の可能性 日時: 2018年3月1日(木) セミナー 14:00-17:15(13:30 開場)懇親会 17:45-19:45 会場:cube garden 北海道札幌市中央区北二条東3-2-5 主催:株式会社INDETAIL 共催:ブロックチェーン北海道イノベーションプログラム(BHIP) 定員:100名 料金:セミナーは無料、懇親会4,000円(当日集金) セミナーの詳細と申込みへ Estonia to promote its eResidency in the USA
https://joinup.ec.europa.eu/node/145414 エストニアの政府機関RIA(Information System Authority)が、米国でeResidency(電子居住) のキャンペーンを実施する予定です。 2015年8月現在、83の国から2000人の事業者がeResidencyに参加しており、1500以上の申請が処理待ちの状態にあります。特に、エストニアと関係が深いフィンランド (26 %)とロシア(12 %)からの参加が多いようです。 日本からの参加もすでに100名以上と聞いていますが、さらに人数が増えるよう、今後もeResidencyプロジェクトを応援していきます。 参考サイト: e-Residency - e-Estonia https://e-estonia.com/e-residents/about/ 2015年9月24日(木)、駐日エストニア共和国大使館で、e-Residency(電子居住)のIDカードを無事に受け取ることができました。 今回は、e-Residencyの申請からIDカード受取までの流れを紹介します。 (1)e-Residencyの申請 エストニア e-residencyの申請についてで紹介した、オンライン申請を利用しました。 事前に用意したのは、 1 顔写真(縦5cm×横4cm:スマホで撮影したものを加工) 2 パスポートの写し(多機能プリンターでスキャンしました) 3 クレジットカード(Visaかマスターカードが必要) あとは、オンライン申請フォームに必要事項を記入するだけです。 申請フォームのイメージ 記入するのは氏名、出生地、生年月日、性別、カード受取希望場所などですが、英語で簡単な「申請の動機」を書く必要があります。英語に自身が無い人は、とりあえず日本語で書いて、グーグル翻訳などを使うと良いでしょう。 申請手数料は、50.99ユーロ。申請時の換算で、7,261円でした。 申請完了の画面 (2)申請の処理 申請の処理時間は、約1ヶ月ほどです。経過は、全て電子メールで連絡されます。 注意したいのが、「迷惑メールのフィルターにひっかかる可能性」です。 連絡メールは、英語・エストニア語・ロシア語で書かれているため、Gmailのフィルターにかかってしまいました。2-3日経っても「申請の受付メール」が届かない場合は、「迷惑メール」のラベルをチェックした方が良いです。 私の場合、次のような経過で、約1ヶ月かかりました。 2015年8月13日 申請の完了(支払完了後に自動返信) 2015年8月14日 申請の受付(処理機関は警察・国境警備隊) 2015年8月27日 申請の許可(IDカードの発行) 2015年9月16日 カード受取日の確認(エストニア大使館から) 2015年9月16日 カード受取希望日を返信、希望日OKの返事 2015年9月24日 エストニア大使館でカードの受取 2015年9月25日 電子証明書の利用可能の通知(警察・国境警備隊から) 「申請の受付」から許可不許可(処分結果)の通知までは、10営業日以内と決まっているようです。 エストニアでは、Identity Documents Act (身分証明書法)という法律に基づき、警察・国境警備隊(Police and Border Guard Board)が市民権の決定や公的身分証明書の処理機関となっており、e-residencyのIDカード発行も警察・国境警備隊の所管です。 ただし、電子証明書の発行については、SK (Certification Centre, legal name AS Sertifitseerimiskeskus) という団体が行っており、いわゆる認証局(certification authority:CA)の役割を担っています。 (3)カードの受取 エストニア大使館でカードの受取は、次のような流れです。 1 予約した日時に大使館を訪問 (JR原宿駅から歩いて15分ぐらい) 2 担当書記官(兼領事)と簡単な挨拶をしてパスポートを提示 3 パスポートで本人確認しながら、パソコンで申請処理 4 両手人差し指の指紋をスキャン登録 (オンラインデータベースへ) 5 e-ResidencyのIDカードと付属品一式の説明 時間にして、15-20分ほど。やり取りは全て英語なので、英語が苦手な人は、英語ができる人を通訳として連れて行きます。 この後、(最初の挨拶の時にお願いしておいた)記念写真の撮影を済ませて、私たちの組織「日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会(JEEADiS ジェアディス)」の名刺を渡しました。 担当書記官のトーマスさんは、とても親切でした。 記念写真も、色々と角度を変えて撮ってくれたり、「名刺を渡しても良いですか」と尋ねたら、ご自分の名刺を2階まで取りに行ってくれたりで、エストニアの印象がまた良くなりました。 エストニア大統領の写真と記念撮影 (4)IDカードと付属品一式 IDカードと付属品一式は、次の通りで、エストニアの国旗にもあるブルーの箱に入っています。 1 デジタルIDカード 2 カードリーダ(USB接続) 3 暗証番号等が書かれた封書 4 電子証明書の利用条件(注意事項)の書面 IDカードと付属品一式 IDカードの券面はシンプルです。記載事項は、氏名、有効期限、文書番号、個人番号の4つだけ。e-ResidencyのIDカードはオンライン利用限定なので、顔写真はありません。ICチップには個人情報は記録されず、2種類のキー(秘密鍵)だけを記録しています。 エストニアでは、氏名と個人番号は、完全な公開情報です。 e-ResidencyのIDカードを利用する際にも、「氏名と個人番号が公開される」ことを、本人が知り同意することになっています。もちろん、私の氏名と個人番号も公開されます。 The certificate owner is aware that their name and personal identification code are processed and published in the database of valid certificates. (電子証明書の利用条件より) 例えば、企業の登記情報サービス(基本情報は無料)で検索すると、企業の「代表者の氏名と個人番号」が表示されます。これらは、誰でも自由に閲覧できる情報です。 もちろん、氏名と個人番号以外の個人情報へアクセスする場合は、法令に基づく根拠と権限が必要になります。 日本のマイナンバー制度では、マイナンバー(個人番号)を広く社会に流通させながらも、あたかも秘密情報のように扱うことになっています。他方、エストニアでは、氏名と個人番号を公開することで、本人の自己情報コントロールがしやすくなると考えているようです。個人番号を追跡・検索キーとして使えば、自分の個人情報がどこにあるのか簡易・迅速に追跡できるからです。 付属のカードリーダ カードリーダは、携帯しやすい折りたたみ式で、デザインも悪くありません。内部を回転させるとUSB接続端子が出てきます。 エストニアのIDカードは接触型なので、日本のSuicaのような使い方はできません。カードリーダに、読取面を間違えないようにして、しっかり差し込む必要があります。 暗証番号(PIN)は、認証用(digital identification)が4桁の数字、署名用(digital signature)が6桁の数字になっています。 個人番号と異なり、暗証番号は「秘密情報」なので、他人に知られないよう、気をつけて管理する必要があります。 暗証番号が書かれた封書には、暗証番号に加えて、「PUK」と呼ばれるコードも書かれています。PUK(Personal Unlock Key)は、暗証番号を何回も間違えて入力してロックしてしまった状態を解除するために必要なコードです。 電子証明書の利用条件(注意事項)には、用語の定義、一般条項、電子証明書保有者の権利と義務、(電子証明書保有者と認証局の)責任範囲、電子証明書の有効性と有効性検証、個人データの処理などを含み、緊急時の連絡方法も書いてあります。 電子証明書の利用条件(注意事項)は、下記のウェブサイトで閲覧することができます。 Conditions for Use of Certificates Issued for Identity Cards, Residence Permit Cards and Digital Identity Cards https://www.sk.ee/en/repository/conditions-for-use-of-certificates/ IDカード(電子証明書)の実際の利用については、後日、また紹介したいと思います。 |
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6月 2023
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一般社団法人 日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia EU Association for Digital Society ( 略称 JEEADiS : ジェアディス)
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