エストニアでは、各市町村が利用する情報システムについて、国が無理に中央で統合することはしないで、利用者中心の視点で事前の調査・分析を行うことで、問題の背景を明らかにしています。
例えば、法律で基礎自治体の責任とされる幼児教育サービスの提供については、調査の結果、親にとっての悩みは、幼稚園入園の申請自体の技術的な問題ではなく、申請書を提出した後、子どもがいつどこに入園できるのか、いつ仕事に戻れるのかなどの情報が、大規模な(人口密度が高い)自治体で不足していることが判明しました。 また、自治体の幼稚園の受け入れ能力には大きなばらつきがあり、サービス提供側にボトルネックがあり、地域によっても異なることもわかりました。例えば、即日入園できる自治体もあれば、将来的に入園できる日がまったく予測できず、いつ入園できるか分からない自治体もあります。理由は様々ですが、主な問題は「過密な地方自治体における幼稚園の定員不足」でした。 技術的な分析により、「自治体の約半数には、住民が電子的に幼稚園の入園を申し込める情報システムがない」ことも判明しましたが、これはあまり問題ではありません。上述したように、親にとっての悩みは「幼稚園入園の申請自体の技術的な問題ではなかった」からです。 また、「電子的に幼稚園の入園を申し込める情報システムがない自治体」も、入園申し込みの申請書を、RTF(ワード等で記入可能)やPDFファイルをウェブ提供して、デジタル署名によるメール提出を受付けています。申請書自体もA4一枚のシンプルな様式で、子供の両親の個人番号や氏名・住所(住民登録または実際の)を記入して、希望事項などを補足するだけなので、申請自体はほとんど負担にならないのです。 これらの調査結果から、地方自治体は自治権を持っており、市町村ごとに幼稚園の入園に関するルールが異なっているため、単一の中央サービスポータルでオンライン申請等のサービスを提供することは困難で、その必要性も低いとされました。それよりも、「将来の親に適切なタイミングで情報を提供することが重要である」と考えて、「プッシュ型で個別化された必要な情報を提供する」ようにすることが、今後のイベントサービスや積極的サービスの課題であるとされました。 「利用者中心」という言葉は、エストニアと同様に日本の電子政府でも使われてきましたが、それが意味することの理解と実践は、調査や分析といった地道な作業の積み重ねにより実現するものであると言えるでしょう。
0 コメント
あなたのコメントは承認後に投稿されます。
返信を残す |
Categories
すべて
Archives
3月 2025
|
一般社団法人 日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会
Japan & Estonia EU Association for Digital Society ( 略称 JEEADiS : ジェアディス)
|
免責事項
本ウェブサイトの情報は、一部のサービスを除き、無料で提供されています。当サイトを利用したウェブサイトの閲覧や情報収集については、情報がユーザーの需要に適合するものか否か、情報の保存や複製その他ユーザーによる任意の利用方法により必要な法的権利を有しているか否か、著作権、秘密保持、名誉毀損、品位保持および輸出に関する法規その他法令上の義務に従うことなど、ユーザーご自身の責任において行っていただきますようお願い致します。 当サイトの御利用につき、何らかのトラブルや損失・損害等につきましては一切責任を問わないものとします。 当サイトが紹介しているウェブサイトやソフトウェアの合法性、正確性、道徳性、最新性、適切性、著作権の許諾や有無など、その内容については一切の保証を致しかねます。 当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。 |