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宗教(やそれに付随する価値観等)は「家族関係のあり方」について影響を与えるので、各国における宗教の現状や変化を観察することは、日本の戸籍制度や選択的夫婦別姓などを考える際のヒントを示してくれるかもしれません。 他方、その国の歴史や文化、憲法や宗教上の価値観を考慮しないまま、「同性婚を認めるべきである」「同性婚を認めないのは遅れている」といった押しつけは、他者の価値観や思想を尊重する本来の多様性と相反する行為なので注意が必要です。 エストニアを含むバルト三国は、共産主義のソ連支配下にある時代はどの国でも宗教禁止が原則でしたが、現在の宗教の事情は国によってかなり異なります。 写真:Hele-Mai Alamaa (https://toolbox.estonia.ee/)
エストニア エストニアは、無宗教が多数派で約6割を占めており(1922年以前は、国民の99.9%がキリスト教)、世界的にも宗教色が薄い国のひとつです。残りの4割で最も多いのがロシア正教(約16%)で、プロテスタント(ルター派)約8%が続きます。カトリックの割合は1%以下でイスラム教の割合と大差がありません。つまり、無宗教を除くと、エストニアの最大の宗派はロシア正教ということになります。2025年6月現在、「バルト三国の中で同性婚を法律で認めているのはエストニアだけ」というのは、無宗教が多数派なので「家族関係のあり方」を修正しやすいのかもしれません。 ラトビア エストニアの隣国であるラトビアは、何らかの宗教を信仰する人が約7割を占めており、そのほとんどがキリスト教の宗派です。割合は、ルター派36%、カトリック19%、東方正教会(ラトビア正教会)13%、その他のキリスト教徒1.4%となっています。バルト三国の中では、最も北欧諸国の影響を受けていると言えるでしょう。同性婚については、パートナーシップは認めるものの法律婚は認めておらず、ラトビア共和国憲法(第110条)でも基本的人権の保護対象を「男女の結びつきである結婚」とすることで実質的に同性婚を禁止しています。 リトアニア リトアニアは、バルト三国の中で無宗教の割合(約6%)が最も低い国です。人口の約74%がカトリックを信仰しており、東方正教会4%、ルター派0.56%が続きます。ポーランド・リトアニア共和国の時代もあることから、隣接するポーランドの影響が大きいと言えるでしょう。国内の地域・地区によって宗派の割合は異なりますが、全体としてカトリックの割合は減少傾向にあります。 同性婚については、リトアニアはバルト三国の中で最も消極的です。同性婚のパートナーシップも法制化されておらず、2025年4月の憲法裁判所の命令により「同性カップルに一定の法的権利と利益を与える法律」の制定を命じたことで、裁判所を通じたパートナーシップ登録が可能になったばかりです。リトアニア共和国憲法(第38条)では、「結婚は男女の自由な合意によって成立する」としており、同性婚を実質的に禁止しています。 憲法の条文を読み解くことで、リトアニアの政府や国民が考える「家族関係のあり方」が見えてきます。 リトアニア共和国憲法(第38条) 家族は社会と国家の基盤です。 国家は家族、母性、父性、そして子供時代を保護し、世話します。 結婚は男女の自由な合意によって成立する。 国は結婚、出生、死亡の登録を行います。また、教会による結婚登録も国が認めています。 配偶者は家族内で平等の権利を持ちます。 子どもを高潔な人間、忠実な国民として育て、成人するまで支えることは親の権利であり義務です。 親を尊敬し、老後の世話をし、その遺産を守るのは子供の義務です。 エストニアの選択的夫婦別姓 最後に、エストニアの選択的夫婦別姓について紹介しておきます。エストニアの婚姻時の姓(氏)の選択については、名前法という法律で定められており、次のような選択肢があります。複合姓とは、「Yamada-Tanaka」のように自分の姓にハイフン接続で配偶者の姓を追加したものです。 1)両方の配偶者が既存の姓を保持する。 2)配偶者の一方が他方の姓に変更する。 3)配偶者の一方が複合姓を作成して変更し、他方の配偶者は既存の姓を保持する。 1と3の選択肢が「夫婦別姓」ということになります。夫婦間で生まれてくる子供の姓は、夫婦別姓を選択している場合、どちらの姓にするかを夫婦間の合意により決定します。 2000年頃は、結婚時に妻が夫の姓に変更するのが多数派(約7割)で、両方の配偶者が既存の姓を保持するケースは2割ほどでした。しかし、2022年の調査では、妻が夫の姓に変更するケースが47%と半数以下になる一方で、既存の姓を保持するケースは41%と2倍になっています。夫が妻の姓に変更するケースは2%と少数です。現在は、家族内で姓が異なるのは、それほど珍しくないと言えます。 家族構成が変化する中で、「男性も女性も自分たちが正しいと思う姓を決める平等な機会を持っていること」が重要であり、その結果として「伝統が変化することに対しても社会がどこまで許容してくれるのか」を政治的・社会的に確認していくことが大切なのではないでしょうか。
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